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「はなをくんくん」

「はなをくんくん」 ルース・クラウス文 マーク・シーモント絵 きじま はじめ訳   福音館書店

雪がしんしんと降り積もる中、動物たちが眠っています。のねずみ、くま、ちっちゃなかたつむり・・・でも突然、みんな目を覚まします。はなをくんくん。雪の中を一斉にかけて行きます。一体何が起こったのでしょうか。1967年に発行され多くの子どもたちに愛されてきた絵本。「はなをくんくん」をご紹介します。

作者のルース・クラウスさんは1911年アメリカに生まれました。「子どもの視点から世界を見ることができる数少ない作家」と評され、想像力やユーモアのセンスに富んだ作品がたくさんの子どもたちの共感を呼んで今日に至るまで高い人気を誇っています。この「はなをくんくん」では、簡潔で無駄のない詩的な文章で小さな子どもたちにも分かりやすいものになっています。そして似たフレーズが繰り返されます。子どもたちは繰り返しの文章が大好きです。そんな子どもたちの心を掴む文章の構成も、子どもの視点を知っているルース・クラウスさんだからこそ作ることのできるものなのでしょうね。また繰り返しの文章は声に出して読んだ時にリズミカルな楽しさが生まれ、物語全体を生き生きと見せてくれます。

柔らかなタッチのモノクロの鉛筆画は、マーク・シーモントさんによるものです。動物たちの柔らかな毛並み、暖かな息遣いが伝わってきます。音もなく、動くものもない静かな森。雪だけがしんしんと降り積もっている。そこに目を覚ました動物たちが巣穴から顔を出し、駆け出し、群れになり・・という「静」から「動」への展開が、絵だけを追ってもダイナミックに伝わってきます。

また、この「はなをくんくん」の原題は「The happy day」。これを日本の子どもたちの心に感覚を伴って届くよう「はなをくんくん」とした、木島始さんの素晴らしい訳に感動します。木島始さんの紡ぎ出す暖かな日本語は子どもたちの心にすっと入り、素晴らしい絵と共に優しい物語の世界を形成しています。動物たちが駆けて行く。ぴたりと止まる。そして笑いだし、踊り出します

はなをくんくんした先にあったものは・・ ぜひお子様と確かめてみてくださいね。

 

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